今月のことばは「浄土宗略抄」より選んでみました。このご法語は別に「鎌倉二位の禅尼に進ぜられし書」ともいわれ『和語燈録』二に収録されています。
内容は読んでいただいてもそのままご理解いただける、とてもわかりやすいご法語です。
ところでこのご法語にある生死とは、よく生まれてから死ぬまでなので人生の問題と理解されやすいのですが、仏教でいう生死とは、六道を輪廻して生まれては死に死んでは生まれ永遠に繰り返して生存していくことを表します。現代社会では、一度きりの人生だからなどといって、過去世も未来世もない刹那的思考が多く、自己中心的な生き方も多く見受けられ、宗教的倫理観からしても大切なものと思います。この輪廻という考え方は古くからのインド思想で仏教もこれを踏襲し、車輪が回って止まることがないことに例えて輪廻と表現されました。
また六道とは下から地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天人の六つの世界のことで、いずれも苦界であり、この六道を超えたところに仏の世界があるとされました。さらにこの六道輪廻の考えに業の思想が加わり、この世で善い行いをすれば善趣といって死後、より良い世界である人間界や天人界に生まれ、悪業を重ねると悪趣といって地獄界・餓鬼界・畜生界に生まれると考えられるようになりました。
しかしいずれも苦界であり、六道を超え仏の世界に至るには悟りを得ることが必要とされました。
それには聖者ではない自ら悟ることのできない凡夫の私たちは、阿弥陀様の極楽浄土に生まれることが一番肝要であり、それには阿弥陀様の本願であるお念仏を申すことが何より大切であるのです。
しっかりお念仏を申しましょう。
教務部長 井澤隆明