早いもので正月も過ぎもう2月を迎えますが、オミクロン株の感染が心配される昨今です。どうぞ基本的な予防策は守って下さい。
さて今月のことばは法然上人が、念仏行者として気をつけることを六ヶ条にして詳説した『往生浄土用心』より選んでみました。
内容は、実に凡夫の心は乱れに乱れ、酒に酔っているようなもので、善悪を正しく判断することができないものです(浄土宗総合研究所編訳『法然上人のご法語1消息編』)。
法然上人がこれまでの仏教にはない本願念仏をもって浄土宗を起こされた大きな理由の一つに、すべての人間は皆凡夫であるという人間観があります。凡夫とは自ら悟りを開いて仏に成ることができない愚かな人のことで、対語は聖人です。ではなぜ成仏ができない愚かな人間であるかというと、それは煩悩があるからです。この煩悩とは自分の心より出る一切の精神動揺の総称で、その類は甚だ多く、よく108の煩悩などといわれています。また法然上人は煩悩は目鼻と同じで、人間に本来備わっており取り除くことはできないものとも述べています。この煩悩は理性的で温厚な人でも突然怒りの心が起こったり、ねたみや嫉妬、怨み、憎しみなどいくつもの煩悩が次々と心の奥底から湧き上がり、その発動を予見したりコントロールすることは甚だ難しく、道を誤ってしまいます。これが普通の人間(凡夫)なのです。
法然上人は28年間比叡山にて厳しい修行をされながら、保元の乱や平治の乱に明け暮れる世情をご覧になり、人々の苦しみや嘆きそして人間の浅ましさを強く感じられました。また自分自身も深く内省され十悪の法然愚痴の法然との自覚に立ち、人間皆凡夫であるという人間観に立脚されたのであります。
やがて法然上人は廃悪修善を極め悟りを求める仏教から、煩悩具足のままに阿弥陀仏の大慈悲に救われていく本願念仏の教えを確立されたのであります。
しっかりお念仏を申しましょう。
教務部長 井澤隆明