今月のことばは『往生大要抄』より選んでみました。この書は法然上人述で浄土宗の教えを体系的に示したもので、『和語燈録』に所収されています。また和語文献の中でも最も長大であり、かつ内容が高度であることで知られています

 内容は、阿弥陀様の大いなる憐れみにもとづく誓願が、いかに深く広く行き届いているかは、たやすく言葉に表すことなどできません。心を傾けて推し量るべきです。

 このように阿弥陀様の万人すべてを救おうという大慈悲心の表れである四十八の誓願(成就すると本願)は、あまりにも深く広く大きく完璧であり誰一人も救いから漏らすことはないのです。そのはからいを私たちが言葉や文字で表現できるものではないのです。心の深いところでじっくりと、そしてしみじみと味わい思うべきであります。私たちも親の愛情や夫婦や子供への思いなどは言葉で簡単に言い尽くせないもので、よく山よりも高く海よりも深いご恩などと表現致します。やはり心の中で静かにじっくりと味わうべきでありましょう。

 法然上人は、たとえ一代の法をよくよく学すとも、一文不知の愚鈍の身になして、智者のふるまいをせず、ただ一向に念仏すべしとも述べられています。どんなにお釈 様の生涯の教えを学んだ者でも、自分は経文の一行もわからない愚かな者ですと、知ったかぶりをしないで謙虚にお念仏を申すことの大切さを述べられています。そのような態度の中にこそ阿弥陀様のみ心がしみじみと偲ばれ、報恩の心も育ちよりいっそうお念仏に励むことができるでしょう。

 しっかりお念仏を申したいものです。

教務部長 井澤隆明