今月のことばは法然上人が『選択本願念仏集』第三章本願篇に、中国の唐の時代五台山や都の長安などで活躍された念仏僧、法照禅師が撰述した『浄土五会法事讃』より引用された一節です。
法照禅師は五会念仏で有名ですが、これは念仏の音声を五段階に変化させ称える音楽的な唱法で、日本天台宗第三祖である円仁様が日本に招来されたといわれています。
今月のことばの内容は、ただ心を転回して多くの念仏を称えるならば、瓦礫のような凡夫を黄金のような往生浄土の人と変化させましょう、となります。表題の言葉の前には、阿弥陀様を念ずれば貧窮と富貴、下智と高才、多聞と浄戒、破戒と罪根の深い者などの区別なく、すべて来迎があると述べられています。
さらにお念仏は、瓦礫を変じて金と成すと、阿弥陀様の慈悲の広大なる功徳が示されているのです。私たちは善人ぶって生きていますが、本性はいかがなものでしょう。例えばあいつが憎い、あいつがいなければ、消えてしまえなどと思うのは日常茶飯事で、恐しい心を持ったまさに瓦礫のような汚れきった醜い心ではありませんか。しかしながらお念仏を称えることで、私たちがおかれた状況や気質、人柄にとらわれず最高最善の極楽浄土に往生することができる人となるというのです。
ところで金は錆びたり腐ったり変化したり致しません。そして永遠に光り輝く特性を持っています。千年の間土の中に埋められていた金貨も、掘り出して水で洗えば千年前の輝きを発します。数量的に少ない金属でもありますが、いつまでも変化しないで光り輝くからこそ貴重なのです。だからこそいつまでも変わりなく光り輝いて私たちを導きお育てをいただく阿弥陀様のお仏像に金箔を用いるのです。
瓦礫を変じて金と成す。しっかりお念仏を称えましょう。
教務部長 井澤隆明