猛暑の夏が過ぎ秋彼岸を迎える頃となりましたが、残暑の厳しい昨今です。

 今月のことばは『東大寺十問答』より選びましたが、これは東大寺を再建した重源上人が、念仏往生について十の質問をし、法然上人がこれに答えたものとされています。
このうち五番目の「大仏を仰げば往生できるか」についての答えの最後の言葉であります。現代文にすると、極楽浄土の阿弥陀様が慕わしいばかりに、そのお姿を仏像に刻んで真の仏様として思いを寄せるならば功徳が得られます。

 重源上人のお尋ねに法然上人は仏教徒として大切な仏・法・僧三宝についてから述べられています。その中で仏宝と一言で言っても様々な仏様が知られています。仏教の教主を仏宝とするもの、常住の法身(真理)を仏宝とするもの、そして絵画彫刻とした仏像を仏宝とする見方があります。

 このような多様な仏様の概念の中、私たち念仏者は西方極楽世界におられ、本願を成就され今も「念仏申してこい、必ず救う」と、呼びかけておられる阿弥陀様によって往生していくこの身であります。
よって他の仏様を拝んでいても、心には西方極楽浄土におわします阿弥陀仏を真仏と思い念仏申すことが大切であり、功徳も大きいのです。

 思えば私たちは各地に巡礼し多くの仏様と出合いますが、軽んずることなく、それぞれの仏様を通して阿弥陀様に思いを寄せてお念仏することが重要であります。

 さらに知人の葬式に参列した場合、どのような本尊様であっても形式にとらわれず、心から阿弥陀様のお慈悲を願いお念仏を申して回向されるのが一番であります。

 『阿弥陀経』では東南西北上下の六方のあらゆる仏が阿弥陀仏はすばらしいと讃嘆され、またお念仏は何にも勝る大善根と説かれております。

 阿弥陀様をまことの仏と思いしっかりお念仏を申してまいりましょう。

教務部長 井澤隆明