4月は浄土宗開宗850年慶讃大法要並びに令和6年度御忌大会が開筵されます。

 さて今月のことばは2月公開時に続き『登山状』より選んでみました。前回に述べましたように、念仏の教えが燎原の火の如く各地に広まりますと激しい反発が起こりました。これを少しでも静まるように、そしてお念仏の教えの正しさを伝えるために送られたのがこの書状です。今月のことばの内容は次のようです。

 お念仏を修める者は、他の行を謗ってはいけません。謗ることは、すなわち阿弥陀様の慈悲深いご本願に背くことになるからです。他の行を修める者もお念仏を謗ってはいけません。なぜなら、あらゆる衆生を救わんと願われたみ仏方のお誓いに違うこととなってしまうからです(浄土宗総合研究所編訳『法然上人のご法語②』)。

 このようにお念仏を修める者は、他の行を謗ってはいけませんと述べられているのは、当時の念仏者の中には、念仏こそ第一で他は雑行で捨て去られるものだなどと主張される人も少なからずおられたのではないでしょうか。よく物事を区別し対立を煽るようなことも多い世の中ですが厳に慎まなければなりません。なぜならば、どんな人をも皆ことごとく救っていくと誓われた阿弥陀様やみ仏方の大慈悲のみ心に反するからです。

 このことは現代の私たちにもいえることです。例えば交際関係で他宗の葬儀に参列したり、神社や他の宗教の集いに参加したりしなければならないことも多々あることと思います。この時はぜひ合掌し静かにお念仏を称えていただくことが肝要です。さらには阿弥陀様以外の諸仏・諸菩薩様に接した時にはすべて阿弥陀様の身代りと思い敬虔な心で合掌お念仏を申すことが大切です。このような態度こそ阿弥陀様の大慈悲により添うものなのです。

 この心は常日頃からお念仏を数多く申させていただくことによってお育ていただけるのです。しっかりお念仏を申しましょう。

教務部長 井澤隆明