暑い夏が過ぎようやく秋の気配を感じる頃となりました。
八木季生御法主台下のご退任に合わせ私も職を辞させていただきましたが、小林執事長上人より引き続き教務を担当して下さいとの要請を受け続投することになりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて法然上人の御法語は数多く伝えられておりますが、その中でも特によく拝読されているものに「一紙小消息」があります。今月のことばはこの中の一節から選んでみました。その内容は、十方にお浄土が数多くありますが、その中でも西方極楽世界を願うのは十悪五逆の人でも往生することができるからですとなります。
このうち十方とは東西南北で四方、その間に東南東など四方、さらに上下で二方、合わせて十方であらゆるところを表します。さらに大乗仏教では十方の諸仏を認め、一仏に一仏国土(浄土)であるから、十方に諸仏の浄土が数多く存在するとされています。例えば東方の阿閦仏の妙喜世界、西方の阿弥陀仏の極楽世界などであります。
この多くの浄土の中で西方極楽世界のみが、十悪五逆の人でも往生することができるのです。この根拠は『観無量寿経』下品下生の段に、十悪五逆をなした者でも命終の時に十声南無阿弥陀佛を称うれば、八十億劫の生死の罪が除かれ往生することができるとの仏の言葉にも示されています。
この十悪とは身で三つ殺生・偸盗・邪淫、口で四つ妄語・両舌・悪口・綺語、意で三つ貪欲・瞋恚・邪見です。五逆とは殺母・殺父・殺聖者・仏のからだを傷つける・教団の和合を乱す五つです。一つひとつの説明は省略致しますが、こうして見ると十悪五逆の人とは人間として最悪最低の者のようです。しかしながら静かに深くよく内省してみれば、実は私自身のことであると気付かされるのです。
十悪五逆の人でも往生できるのは阿弥陀様の大慈悲心が念仏の中に含まれているからなのです。
しっかりお念仏を申しましょう。
教務部長 井澤隆明