浄土宗開宗850年奉賛局だより(11月)
2023.11.01
一つひとつ、0.1mm単位で 〜大殿耐震補強・前期工事が終わりました ②〜
今月は先月に引き続き、本年8月に完了した大殿耐震補強等前期工事について報告します。
〇本堂天井補強工事
本堂の天井は、高いところで8m以上の高さにあり、面積は約1140㎡もあります。これだけの大きな天井が大地震などにより落下するようなことがあれば、手を合わせる皆様に危険が及ぶことは避けられません。開宗850年を契機として、天井の全面的な崩落を防ぐ補強を施すこととなりました。
本堂の天井は、大まかにいえば、上階の床に当たる躯体から吊りボルトで鋼材と天井板を繋げ、そのさらに下に金色の格子天井を吊るしています。各部材の接合部が破損したり外れたりすれば天井が連鎖的に崩落する可能性を否定できません。
工事は、吊りボルトの強度を確認したうえで接合部をビスで留めるとともに、仮に接合部が破損したとしても天井が一気に崩落することのないようワイヤーなどを用いて2次的な安全策を講じました。何しろ広い面積をもつ天井です。今回の工事により補強した箇所は、なんと1万4467カ所。当然のことながら一つひとつ手作業で取り付け、監督者が自らの目ですべてを確認します。
天井裏は窮屈で足元が悪く、しかも空調がないためひどい暑さになります。体力がむしばまれる中で1万を超える工程を成し遂げたのですから、職人のプロ意識には驚嘆せざるを得ません。
〇内陣床塗装工事
法要が執り行われる本堂の板の間を内陣といいます。磨きこまれた床の上に経机が整然と並べられるシンプルで洗練された設えに江戸の粋を感じさせられます。内陣は面積が約460㎡あり、長さ5mの大きな床板約150枚が敷き連ねられています。前回の塗装から14年が経ち、表面の剥がれや傷が目立つようになったため、このたび塗替えを行いました。
塗替えは従前の塗膜を紙やすりで削り取り、新たな塗膜を塗り重ねて行います。既存の塗膜を削り落とすのは、0.1mm単位の作業です。削り過ぎれば木の素地を傷付けてしまいます。機械を用いていても、いい仕事ができるかどうかは究極的には職人の腕にかかっています。腰をかがめながら、広大な床面にやすりを当て続ける姿には頭の下がる思いでした。
今回の塗替えでは、ウレタン塗料を2層塗り重ねて表面を磨くという工程を3度繰り返しています。したがって、塗膜は計6層重ねられていることになります。塗り重ねるごとに表面の色は深みを増し、鏡面のごとく輝いています。
「ご本尊の姿が床に美しく映し出されるように。」
施工担当者の語ったこだわり。ぜひ皆様の目でお確かめください。
奉賛局 堀江利昌