浄土宗開宗850年奉賛局だより(10月)
2023.10.01
眼には見えない、大切な仕事 〜大殿耐震補強・前期工事が終わりました ①〜
大殿は当山浄土宗開宗850年慶讃事業として、本年4月から大地震に備える耐震補強工事等を行っています。本堂を閉堂して施工してきた前期工事が8月に無事完了しました。
今月は耐震補強工事について、来月は耐震補強と同時に施工された天井補強工事及び本堂内陣床塗装工事についてそれぞれ報告します。
大殿は昭和49年に建立された鉄筋コンクリート造の建物で、まもなく築50年を迎えます。この50年間で建物に要求される耐震基準は変化しています。2階本堂は広大な空間を柱で支えているため、横揺れに対して相対的に弱く、現在の耐震基準を下回る状況にありました。2か年度に及ぶ耐震診断、基準に則った補強設計を慎重に行った上で、本年度に正面側の壁を約30cm厚くする補強工事を施しました。
写真①が、耐震補強工事が完了した本堂の壁です。いかがでしょうか。
多くの皆様が工事前との違いにお気付きにならないことでしょう。私もこの写真だけ見たら同じように感じます。しかしながら、確実に壁は30cm厚くなり、地震に備える力は向上しています。そして、その裏には施工した職人の苦労が隠れています。
工事は、大まかにいえば、(1) 元の壁面を削り落として構造体を表に出し(写真②)、(2) 壁を増すためにアンカーを打って鉄筋を組み、(3) コンクリートを流し込んで新しい壁に仕上げる、という順序になります。一見ただの壁であっても、見えている部分だけで高さ8m以上、幅10m以上の大きな壁です。壁は床下にも、天井の格子の上にもつながっています。これだけの壁に立ち向かうのです。
今回の工事で特に課題が多かったのは工程⑵のアンカーを打つ作業でした。50年前と現在とでは建物の建設の仕方に違いがあり、穴を開けてみないとアンカーを打てるかどうかわからないところもありました。打とうとしては修正するという繰り返しに、施工会社の担当者にいわせれば「2歩進んで3歩下がる」状況であったそうです。そのような中でも根気強く取り組み、無事この工程を完了させることができました(写真③)。配された鉄筋を覆うようにコンクリートが流し込まれ、きれいな壁に仕上がっています。
一見気付かれにくい工事であっても、施工者の智慧と技術と努力が込められています。こうしてでき上った壁に私たちの安全は守られているのです。
そして、この壁のさらなる背景には日本全国の皆様の本事業への後ろ支えがあります。皆様へ心よりの感謝を込めて、ここに報告します。
奉賛局 堀江利昌