浄土宗開宗850年奉賛局だより(6月)
2023.06.01
雨音の調べ
道端の小さい花や水たまりといった何気ない風景にふと季節の移り変わりを感じることはありませんか? 四季を愛で、その微妙な変化に気づく喜びを大切にしたいものです。
一昨年、皆様のご協力を得て、850年慶讃事業の一つ、大殿屋根瓦総葺き替えが竣工致しました。チタン瓦で葺き替えがなされ、金色の鴟尾も鮮やかな美しく輝く屋根となりました。見た目のほかにも変化があることにお気づきでしょうか。それはこれから迎える梅雨の季節、特に雨の日にこそ明らかとなります。
大殿の屋根は上層の錣屋根と下層の裳階屋根からなる重層構造となっています。裳階屋根は雨打(ゆた)ともいわれ、雨風から建物を保護するもののようです。錣屋根に降り注ぐ雨は屋根をつたい落ち、裳階屋根に当たります。その雨音にはこれまでとは異なる趣がありますが、皆様にはどのように響くでしょうか。
以前とは変わったと言われてもどのように違うのか、比べたくても以前の音を忘れてしまった......と嘆くなかれ。以前の瓦屋根の雨音は三門の下で十分に味わうことができます。
夕立など突然の雨の際には三門で雨やどりする方が多く見られます。その方々は意識することなく、雨粒と瓦屋根が生み出す調べをお聞きになっているのだなぁと思っています。雨の日は何気なく三門をくぐらずに、耳を澄ましてゆっくりと通ることをお勧め致します。くぐり終えたならば、傘を打つ雨音を楽しみながら参道をお進みいただき大殿へ。新しくきれいになった屋根を見上げ、新たな雨音を感じてみて下さい。そして、大殿内のご本尊阿弥陀様に手を合わせ、お念仏をお唱えするうちに、雨音が阿弥陀様のお声のように降り注ぎ、我が身に染み入るような感じがすることでしょう。