本当に大切なもの
断捨離ということをよく耳にするようになったある日、あるお宅の法事でこんな話をうかがいました。
その方には小学生低学年くらいの子が3人いて、おもちゃや物が増えてきたとのこと。
「子供は、貰うのは好きだけど、物を手放すのって難しいですよね。捨てられないのですよ。」
なるほど、そういうものかなと思いながら聞いていますと、断捨離の大切さに気付いてから、家族でそのように心がけ、一日一つずつ家族で物を手放し、断捨離を始めたそうです。
徐々に、家族の皆が手放すものが少なくなってきた頃、今回はあと一つ手放して終わろうと決めた。それから、最後の手放す物を決めるのに一週間かかったそうです。ですが、それらの物を手放した後、本当に大切な物だけが残り、物事を選択する力が付き、物を大切にする心が強くなったとうかがいました。
とはいえ、大切なものだけを選んでいく。とても難しいことです。私も毎年、年末の大掃除でもなかなか整理できずにいます。
仏教にも多くの仏様やそれぞれの教えがあります。ですが、私たちが本当に大切に残さなければいけない教えとはなんでしょう。様々な修行方法があり、どの教えも尊いです。そんな中、比叡山で多くの修行を学ばれた法然上人は、迷いの多い私たちが、間違いなく救われるには、「南無阿弥陀仏」と称えるお念仏こそ、本当に大切です、と説かれています。なぜなら、阿弥陀様は、すべてのものを救いたいという願いから、誰でも行い易くすべての功徳を込められたお念仏一行を選び取られたからです。阿弥陀様ご自身が選択し、お誓いになられたからこそ、間違いないのです。また、お釈様も諸仏も、お念仏をお勧め下さっております。
私たちはあれも大事、これも大事となかなか選ぶことが難しいものです。今まで大切にしてきたものも多くあると思います。どの教えも尊いですが、阿弥陀様を信じ、本当に大切なお念仏だけはしっかり残し、勤めていきたいものです。
本山布教師 西澤正彦
静岡教区 西運寺