白蓮華
新緑が鮮やかに揺れ、若葉が香る今日この頃です。
境内のお掃除も、木々の枝から美しく鳴く鳥の声が励ましてくれます。
私は月に一度参加させていただいているお念仏の会をとても楽しみにしているのですが、そのお念仏の会に、いつお会いしても清々しい雰囲気のする九十余歳のご婦人がいらっしゃいます。
お念仏の会が始まった当初、ご婦人がお持ちになっていたノートを見せていただいたことがあります。ノートにはお釈迦様の御一代から浄土三部経、そして法然上人の御著書である『選択集』に説かれているみ教えがびっしりと書き込まれていました。
いつもそのご婦人は茶話会でいろいろなお話をして下さいますが、とりわけ、毎朝お仏壇の阿弥陀様と先立たれたご主人様へ一杯のお水をお供えし、一日の終わりにはそのお水をお下がりとしていただき、飲み干してからお休みになっているというお話をよくして下さいます。そして「あとはね、ぜーんぶ南無阿弥陀仏で大丈夫なのよ」とおっしゃいます。
このご婦人はびっしり書き込まれたノートをお持ちになっていても、決して「お経にはこう説かれているから」という理屈はおっしゃらず、ただ阿弥陀様と、先立たれたご主人様を毎日親しく感じられながら過ごし、そして「南無阿弥陀仏」のお念仏にすべてをお任せになられているのであります。
お念仏をしっかりとお称えしている方は「嘉譽(かよ)」といって、あたかも泥の中に咲く白蓮華のような誉れ高いお姿になると言われております。
毎月、お念仏の大先輩であるこのご婦人の白蓮華のようなお姿からたくさんのことを学ばせていただきながら、一緒にお念仏をお称えさせていただけることをとても嬉しく思います。
皆様も、お一人お一人が白蓮華となり大切な方々の道しるべとなっていただき、そしてその大切な方々と共々に阿弥陀様のお浄土へと参れますよう、日々お念仏をお称えして過ごして参りましょう。
合掌 南無阿弥陀仏
本山布教師 遠田憲弘
東京教区 慈眼院