目的地への行き方
私ごとですが東京での生活が二十年を超え、最近四度目の引越しをしました。二十年が経ち東京に慣れていたつもりでも新しい住所になるとめっきりわからなくなるのが公共の交通手段です。東京は蜘蛛の巣のように道路や線路が張り巡っていて目的地に行きたくてもどの道順で何に乗って行けば良いのか選択肢が多過ぎてとても難しく悩んでしまいます。
地図や路線図を見て、駅で駅員さんに聞き、看板を見て道に迷いながらやっとの思いで目的地にたどり着くことができます。
最近便利なのはスマートフォンです。目的地までの行き方を案内してくれる検索アプリに今いる自分の位置と目的地を入力すると道順から乗り換え案内、到着時間まで教えてくれます。しかしそのスマートフォンも誰もが持っているわけではなく、持っていたとしても上手に使いこなすには操作に慣れていなければなりません。
私たちがお唱えしている「南無阿弥陀仏」のお念仏のみ教えは法然上人が約八百年前にどこへ向かえば救われるのか迷い苦しんでいた人々にお弘め下さいました。誰もが救われる阿弥陀様の「西方極楽浄土」という目的地を我々にお示し下さり、そしてその極楽に行くためには難しい学問や、厳しい修行ではなく「阿弥陀様」を心から信じ、「南無阿弥陀仏」のお念仏をお唱えすれば誰もが必ず救われるとお導き下さいました。極楽に行くためには地図や路線図も必要なければ、道案内してくれるスマートフォンもいらないのです。たとえどんなところに居ようとも、ただ法然上人のお導きの通り、南無阿弥陀仏とお唱えすれば誰でも極楽浄土へ往くことができるのです。
九月は秋のお彼岸がやってきます。ご先祖のお墓参りと共に、お中日には真西に沈む太陽に私たちの目的地である阿弥陀様の西方極楽浄土に思いを懲らして心からのお念仏をお唱えしましょう。
それが唯一の目的地への行き方で、必ず迷うことなくたどり着くことができるのです。
山布教師 山崎聡志
北海道第二教区 大善寺