わかりやすく
先日ある研修会へ参加した時のこと。
講師は元NHKのアナウンサーでコミュニケーション力についての講義であった。
あるプロのアナウンサーの失敗談で、リポートの際に岐阜県の旧中山道からお伝えします、と言うべきところを横書きだったためか、「一日中、山道からお伝えします」と読んでしまい苦情の電話が殺到した、という話を聞いた。
通称「山道事件」と言うそうだ。
このように、言葉で伝える難しさがわかる。
ある三回忌の法事で私が法話の最後に同称十念で共にお念仏をお称えしたその後、親戚の方からこのようなご質問があった。
「私は浄土宗ではないんですが、先ほどジュウネンと言いましたが十年も成仏するのにかかるんですか?」と。私は思わず絶句しそうになるも、すぐさまペンを持ち同称十念という文字を書き、十遍のお念仏を皆でお称えするんですよ、とお伝えをした。それ以来、なるほど、自分はわかりやすくと常に心がけていたつもりであったがそうではない。誰もが理解できるような言葉で説明することが大切だと思い知った。私もかつて英語のヒヤリングテストで知らない単語が出てきた途端につまずき、その先は疑心暗鬼になった経験がある。
十念という言葉を知らない方ももちろんいらっしゃるだろう。だからこそ説明せねばならないと改めて思う。
先程の「山道事件」のような勘違いもあるだろう。
法話ではどうしても専門用語や固有名詞が出てくる。だからこそ都度丁寧な説明を心がけたいと思う。お念仏の御教えを誰にでもわかりやすくお伝えするということは至難の業かもしれない。しかしそこから目を背けずにありがたき法然上人の御教えをわかりやすく、そして正しくお伝え続けられるよう日々悩みながらも、努力して参りたいと切に感じたのである。
同称十念
本山布教師 伊藤良成
千葉教区 極樂寺