確かな歩み

 「はぁ、生きるって大変」

 これは先日、電車のホームで80代前半頃の女性の方からすれ違いざまに聞こえた言葉でした。この方は何を感じ、何を思いこの言葉を漏らしたのでしょうか。

 改めて私たちの生活を振り返れば、嬉しいことや、笑い合えることがたくさんある反面、人知れず苦しむことがある。満たされないことの方が多くある。病の苦しみ、どうすることもできない命の悩みを抱えている。どこに住もうが、どんな仕事をしようが、どれだけ経験を積もうとも、一人一人が尽きることのない様々な悩み苦しみと共に暮らしております。この人の世に生きる中で、自分の思い通りにいくことなんてほとんどありません。

 しかし、悲しみや苦しみだけで終わらないのが、仏様のみ教えであります。今より2500年も昔に、すでにお釈迦様は「この世は悩み迷いの世である」とお伝え下さっております。そして「それでも誰もが幸せに生きてほしい」と正しく生きてゆく、そのみ教えをちゃんと伝え残して下さいました。

 今より850年前、法然上人が悩み嘆かれながらも、命がけでご修行、学問の末に、そのみ教えをしっかり受け取り、ただ一つ、お念仏のみ教えを私たちに繋いで下さいました。

 阿弥陀様に願い称えれば誰もが救っていただける。阿弥陀様は、苦しむ者を誰一人として決して見捨てません。南無阿弥陀仏と称えた者を、清らかな極楽浄土へ必ず救うと、お誓い下さいました。その誓いが、破られることは万が一にもありません。

 不安の中で生きる私たちに、必ず救っていただける、そのみ教えが確かに届いている。

 これは私たちにとって、なによりも心の支えになることではないでしょうか。

 悩み苦しみから逃れることができないからこそ、全てをお任せできる阿弥陀様に救いを求めましょう。それこそが今を力強く歩んでゆく、正しい道であると私は信じております。

 共々にお念仏を大切に相続してまいりましょう。

本山布教師 廣瀨晴彦
群馬教区 森巖寺