日頃の備え
私のお寺では雪の季節を迎えています。雪が降ると行うのが雪かきです。雪かきの道具は以前よりも軽量化され使いやすくなりました。日頃から気象情報を確認し、自分に合った雪かきの道具を揃えておく。そのような「備え」をしておけば、突然の積雪や大雪にも慌てることなく対応でき、一安心となります。
では、人生における「備え」とは何でしょうか。
人生の一大事。それは死です。とりわけ自分の死は、非常に大きな問題です。私たちは死について考えることを敬遠してしまうものです。私の人生の一大事ですから「安易に考えられるものではない」でありましょうし、「そんな嫌なことは考えたくもない」というのが本音でしょう。しかしながら、この世に生まれてきた以上、いつか必ずこの世を去る時が来ます。私たちは死を決して避けることができないのです。真剣に考えれば考えるほど、この世に私という存在がなくなってしまう恐怖、死後どこへ行くのかという不安、大切な家族やご縁のある方々との別れなど、悩みや苦しみにはキリがありません。
阿弥陀様は、そんな悩みや苦しみに嘆く私たちを救うべく「極楽浄土に往生したいと心から願い、南無阿弥陀仏とお念仏を称えたならば、その者たちを必ず救い導く」とお誓い下さいました。
常日頃から、阿弥陀様とご縁で結ばれた先には、この世でしっかりと護り導いて下さり、最期臨終の時には、悩みや苦しみの一切ない安らかなお浄土に往生させていただけるのです。
法然上人が日頃おっしゃっていたお言葉に、「生きている間はお念仏を称えてその功徳が積み重なり、命尽きたならば極楽浄土へと往生させていただくのです。いずれにしてもこの身には、思い悩むことが何もありません。」とあります。
日頃から共々にお念仏をお称えし、いつか訪れる人生の一大事に「備え」をしましょう。
本山布教師 竹村崇邦
岩手教区 実相寺